暇人映画レビュー

バカが書いた映画レビューです 初心者なので拙いですが、よろしくお願いします

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2016)

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•概要

リーマンショックをいち早く予期しその恐慌に投資をしていた4人のアウトローなトレーダー達がいた。そんな4人(4グループ)の予期するまでの過程を、この悲劇が起こることを予期するはずもないごくごく普通の国民達の生活風景を交えながら描いた金融ドラマ作品。
第88回アカデミー脚色賞受賞作品であり、監督賞、作品賞、その他諸々全部で5部門にノミネートされた。

•感想

リーマンショックを題材にしているということで鑑賞前にちょちょっと軽めにリーマンショックとは何か、そして原因についてを頭に入れて鑑賞。煽り文句が《世界経済の破綻を予期した4人のアウトローがいた》といったものだったのでスコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のように人間ドラマの中に金融経済事情を挟んだヒューマンドラマなのかと想像していたこともあり、少々準備しすぎた感は正直あった。
そして鑑賞へ……。
結果、事前に詰めといた軽知識がなんの意味もなさないほどの経済用語の嵐。開始5分でそれを察知。自分と一緒に同じ劇場で鑑賞した観客の半分以上は完全に理解できる内容ではない。自分がバカであるからと言えばそれまでだが恐らく上記に書いた通りである。本当に着いて行くのもかなり困難な話。
しかし今作、自分が着目した点はテイストである。ストーリーは誰も予期できなかった金融経済破綻までを描いたもの。つまり当たり前だと思っていたことが突然当たり前ではなくなる、固定観念の破壊である。そして重要なのが、それが実際に起こったノンフィクションであるということ。このようないつ起こってもおかしくない大災害同等の経済破綻(しかもつい最近)を題材としているにも関わらず映画テイストは驚くべきことにコメディ。 
思えば今作を監督したアダム・マッケイは過去に『俺たちニュースキャスター』という映画を撮っている。これはコメディ畑の重鎮ウィル・フェレルの面白おかしいおバカコメディ映画であるように見せかけて実は1970年代のアメリカでの明らさまな女性差別問題を笑いに変えた、エッジの効いたブラックジョーク満載の作品。同監督作品では他にもいい年したニートを主人公にし美化した『俺たちステップブラザーズ』や他人の不幸を自分の出世に利用しようとする愚かな男を主人公としたコメディ映画『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』といった主に笑えない話を笑い話に変えるが、重要な警鐘事はしっかりと提示するという一貫性がある監督である。
しかし今作の凄いのはテイストがコメディチックだが全体的にはシリアスなところ。ちょくちょく笑えないブラックジョークを挟んだり、作品の内容及びこれから起こる経済破綻という悲劇とは場違いなシーンの挿入などを図りなんとなく軽めの作品に仕上がっている。もちろん語られていることはかなり重い。しかしなんか笑えてくる、なんか可笑しい。このブラックジョークとシリアスのバランスが絶妙。このバランスを保ちつつあくまで史実通りに、ドキュメンタリー風に撮っているということも手腕が発揮されていて印象的であった。
しかし逆にこの史実通りという路線が吉と出たとは限らない、とあくまで自分は感じる。
というのも主人公は4人であり、それぞれが別々のルートを辿って経済破綻を予想するのだがこの4人が1回も交わる事がない(一度、同じ会場に2人がいる時はあったが)。4人それぞれのストーリーが独立していてアンサンブル性、映画としてのエンターテイメント性が欠如していてキャラクターの魅力は感じたもののそれぞれに深くは没頭する事ができなかった。そしてやはりなんといっても内容の難解さ。恐ろしいぐらいつるべ打ちの経済用語のせいでイマイチどのような状態状況に陥っているのか、または陥るのかが掴みにくく副題でもある【華麗なる大逆転】(決して華麗ではない笑)の大逆転に対しての爽快感は感じにくい。

•まとめ

監督の一貫性を垣間見れる作品にはなっているもののイマイチ伝わりにくい内容、題材という事もあって人を選ぶ作品であることは間違いない。金融経済を知っておいたほうが今作の面白味が確実に増えるが、自分みたいに中途半端に知識を入れておくのはかえって逆にボコボコにされ悲しい感じになるので気をつけて!!
脚色賞おめでとうございます。